突然の病気や事故、認知症により判断意思能力の低下により自分の意思や気持ちが家族はじめ他者に伝えることができない事があります。例えば、どのような医療を受けたいか、自分が介護施設に入居したいかどうか、自分の気持ちを代弁してくれる第三者に自分の気持ちを伝えておくことで自分の病気後の療養や生活に反映させることができます。今回は行政の立場でこの考えを市民に広めていく関根さんの取り組みのご紹介です。
新潟市保健衛生部 地域医療推進課 係長
関根 伴和
新潟市の救急医療の推進(救急患者の受け入れ態勢の整備、救急医療の適正受診の促進)や在宅医療介護連携の推進(医療介護連携、他職種連携、訪問診療医、訪問看護師の確保や育成)を行政の立場で推進。
※所属等はヒアリング当時のものです
ACP(Advance Care Planning)とは何ですか
いのちに関わる大きな病気やケガはいつどんな時になるかわかりません。もしもの時に自身自分が望む医療や介護についてあらかじめ前もって共有しておくことです。国では「人生会議」と銘打ち普及しています。
ご自分の望む医療や介護についてあらかじめ共有しておく相手はまずはご家族や身内の方です。そしてお話しした内容を主治医や介護関係者にも共有していく事がとても重要になってきます。また一度話しておけばよいということではなく、病状の変化にともない、気持ちが変化するということもあります。各局面に応じてお近くの方や関わりのある医療・介護関係者にご自身の今後の医療や介護に対する希望を伝えすることが重要になります。
ACPはなぜ必要ですか?
いのちの危険が迫った状況だと約7割の人が自分が受けたい医療や介護の意思表示ができないとされています。ご自身が望む医療や介護についてご家族や医療介護従事者に事前にお話をしておくと意思表明ができなかったとしても、周りの人が本人の意思を代弁しやすくなります。そのことにより、ご本人自身が望む医療や介護が受けることができ、ひいてはQOL(Quality of life)の向上が見込まれます。またご本人にとってのメリットだけではなくご家族に大きなメリットがあります。本人の意向に沿った医療や介護の内容を事前に把握することで意思決定への悩みが減るというメリットがあります。本人の意思がない治療方針等の決定に本当にこれでよかったのか?と悩まれるご家族は少なくありません。
ACPはそのようなご家族の心的ストレスも軽減するというメリットがあります。
ACPの普及に課題と感じていること
ACPの普及に関して課題は大きく2つあると考えています。一つ目はACPに関して話し合う機会が少ないということです。純粋に自分たちの今後の医療や介護に関することについて話し会う機会がないということと、縁起でもないという風潮も未だあるようです。また、高齢者の方にACPに関する普及活動をしても、高齢者の方にしてみれば若い人に普及してほしいとなるようです。若い方へのACPの普及に関しては小・中学生を対象に学校に出向いき、働き世代に対しては夜に行うセミナーなどで普及活動を実施しております。言葉だけでも知ってもらったり、機会があればご家族と話してみてはいかがですかと伝えているだけで、結果につながっているかがまだ不明です。
2つ目は医療介護従事者においてもACPという言葉すら知らない状況があります。ACPへの関心や基本的な理解をいただくことは市としても課題と感じている。
某病院においては先生、院内研修でACPに関しての研修を実施したり、院内職員への普及への取り組みをしている病院もあるようです。
ACPについて今後の期待する展開をお教えください。
まずは難しい事を考えず、自身の医療や介護などに関する意向をご家族はじめ大切な人とお話をしていただくこと。そして、その内容が医療介護従事者間でもシームレスに共有できるようになればと思っております。本人の思いに沿った医療や介護サービスが提供できるようなまちになってもらえればよいと思っております。