病気の時や、老後の生活に必要な社会資源として医療機関や介護施設等があります。
新型コロナの流行に伴い受診控えにより医療機関の経営に触れる報道はありますが、新型コロナ流行前から医療機関や介護施設の経営の在り方には課題がありました。今回は介護施設の理事長に経営の実態は課題について伺った
社会福祉法人 恒慈会 ケアハウス優友 理事長
渡邉 博之
ケアハウス優友施設長歴任後理事長就任に至る。ケアハウス優友施設長着任後はご入居者の生活安定のため率先して地域住民・関係機関との関係性構築のため尽力。現在は当該地域に於いてなくてはならない施設となっている
※所属等はヒアリング当時のものです
ご利用者からの支払い状況に関して現状をお教えください
生活保護の方も入居されています。その方がお亡くなりになったりすると退去時の居室の状況により修繕費用が高額になって生活保護の枠組みでは出していただけないという現実があり法人側の負担が大きくなっています。また、入院されると入院費等は生活保護(医療扶助)で賄えますが、入院期間中、施設のお部屋代が発生しその分が払えないということもあります。また、入居費を滞納していた方に後見人等が付き月々数万円の返済計画をたてても途中で亡くなられることもあり、入居前は払える算段であっても病気で突然収支が合わなくなりご支払いが滞ることもあります。
さらにご入居者の社会背景も影響します。 ご自身によるお支払いが困難な時ご家族等によるサポートがあればよいのですが生活保護の方で親族がいないという方も多いです。 しかし社会福祉法人である以上そのような社会的なサポートが得にくい方であっても、そのことだけでケアハウスへの入居を短絡に拒否するわけにはいきません。法人経営と社会福祉法人の使命(生命を守る)をどう天秤にかけるかが大きな課題です
ご支払いが難しいご入居者にはどのようにご対応されていますか
まず入居前の事前面接において月々の入居費用の支払いに関するお話もします。現在の資力では入居費のお支払いが難しい場合は、ご家族やご親族のサポートはじめ生活保護の活用も含めた相談対応も致します。その時に十分な情報が入手できれば良いですが、入手できず入居後に話と違うという場合も残念ながらございます。家族状況、支払い能力等について正確な情報収集がカギとなります。お金が無いからご入居はできませんという冷たく画一的な対応はいたしません。
ご支払いを頂く資力はあると思うが認知機能の低下により支払いが上手くできないということもあります。その場合は成年後見人制度などを活用することもあります。
不幸なことに入居費用が滞納ということになった場合は、返済計画の立案等お話をさせていただきご本人及び保証人等と粘り強く相談をさせていただきます
医療・介護にまつわるお支払いに関して望むサービス等ございますか
施設入所希望者の調査機関のようなサービス(ある種の与信)があればよいと思う。
現状は事前面接での情報収集のみでご入居の判断をしている状況です。また認知症の方や人格障害の方の場合、正確な情報が得られるとは限らない(これらの方々の親族及び福祉関係者さえ敢て本当の状況を私たちに語らないこともある)。難しいでしょうが正確な情報が得られるような第三者の調査機関があればよいと思います。
また、未収金に関しての保険やある程度の行政の保証体制があればよいと考えます。我々のようなケアハウスに限らず特別養護老人ホームや病院等の医療機関も未収金の状況は同様またはより深刻であると考えます。地域の方が安心して生活していけるための社会インフラとして医療と介護があるならば、未収金に対しての経営悪化をサポートする仕組みも必要です。特に病院は救急で運ばれ必要性があれば手術をしなくてはなりません。私たちのように事前に支払い状況の確認ができる環境ではない。そのような意味では病院のほうが保険や保証のシステムが早急に必要だと考えます。
現在のようなコロナ禍の世界においては医療や介護等福祉従事者が言い知れね恐怖を感じつつ使命感と勇気をもってこの災禍に立ち向かっている事実について、無意味で残念な非難中傷を浴びることが無いよう真摯な姿勢でマスメディアが報道してくださることが必要だと考えます