地域医療の要の職種と言われる開業医。住民により近い立場でより良い医療提供を実施していくために、病院との連携、介護との連携、様々な取り組みをしていく必要があります。今回は医療と介護の連携において情報共有の現状や課題を伺った。
山の下クリニック
阿部 行宏
昭和大学医学部卒業後、消化器内科医として病院勤務。その後阿部胃腸内科医院を継承。2021年4月5日より医院を移転し山の下クリニックと改名。在宅患者により良い医療が提供されるためには、生活を支えるための介護・福祉職との連携が不可欠と感じ、介護・福祉職と顔の見える関係のネットワーク、「通称:山の下ネット」を構築し代表を務める。また、摂食嚥下障害・栄養に関する取り組みにおいても多職種で対応できるよう新潟東区摂食嚥下サポートメンバー、「通称:新潟エッセン」の会長に就き、介護・福祉職と共に新潟の在宅医療の推進を実践。
※所属等はヒアリング当時のものです
連携において課題と感じていることは
医療へ繋ぐ、介護へ繋ぐことは大事ですが、それは単に患者個人を動かす(受診に誘導する)だけの繋ぎでは意味がありません。具体的なエピソードとしてはある介護保険関連事業所から受診を勧められ来院してきたは良いが、患者やその家族はなぜ受診してきたかが分からないという例がありました。受診をしたほうがいいと判断するに至った経緯を本人、ご家族に十分伝えてから受診を勧めるなり、了解を取ったうえで医師への情報提供をした上で受診をするなりの対応が必要です。
また、情報の鮮度も重要です。同じ「発熱」でもそれが1週間前と今日からでは意味合いが変わってきます。連携先が判断をしやすくするための情報提供が相互になされること。それが結果的に患者に良いサービスの提供なります。また、情報提供は双方向性が重要で、介護側からだけでなく、医療側からも内服の変更、指示の変更とその意味を伝えることが必要です。
医療と介護の連携において留意されていることは?
感情的になってしまうと、結局そこの表面的なことしか見られなくなってしまう。伝達の重要性をきちんと伝えることしかないかなと思うので、医療と介護が対等であることをきちんと伝えるかどうかが重要です。
どうしてもヒエラルキーがあり、医師は忖度される傾向にあるが、医療と介護では患者や市民利用者に対する役割が違うので上下の関係ではありません。そして互いに役割りが違う事、そこから生じてくる求める情報が違うことを医療と介護がお互いに認識する必要があります。お互いの役割や求めている情報に違いが分かる環境設定が必要と考えます。
医療と介護の連携をより良くするための解決策は?
例えば緊急で入院が必要の場合などには、バイタルや何時からの症状なのか、基礎疾患
の有無などの情報が医療としては必要になり、そのような情報提供が介護背施設からあると望ましいです。
逆に病院から患者が退院する時に、介護施設などが求める情報を病院が介護施設に提示しなければいけない。歩行状態や食事状況や排せつ状況、キーパーソンは誰かなどを介護施設側は把握しなければならなく、その情報提供を病院がしなければなりません。
このように、情報共有と一言に行っても求める情報が違うということをお互いが認識する必要があります。そのためには何故相手がその情報が必要なのか必要なのかが分かってないと答えられません。だからそこの違いを分かるためには、やはり顔の見える関係性がどうしても必要になってきます。
その機会を作りたく、多職種で集う「山の下地域包括ケアネット 通称:山の下ねっと」を立ち上げた。山の下ねっとでは、医師や介護士だけではなく、歯科、薬剤師、ケアマネージャー、リハビリ職等多くの職種が参加しています。また、医師であっても開業医もいれば病院医師もいるます。テーマを設定しグループワークなどを通じて他の職種の役割や考えに触れ合い、お互いの職種を理解する場になればよいと考えているます。そのことが、医療と介護の連携がシームレスとなり結果的に患者に良いサービス提供につながれればと考ています。